おかしな「勧告」について(その2)

県立高校の共学化を求める「勧告」について

 

たかしな司法書士事務所の司法書士 諏訪部秀明です。

 

今回は、前回に引き続いて「おかしな「勧告」について その2」として私の考えを述べさせていただきます。

 

埼玉県内の公立高校のうち、いわゆる別学校の共学化を求める「勧告書」(令和5年8月30日付け)については、その全文を「埼玉県男女共同参画苦情処理委員による勧告について」で検索して見ることができます。

 

さて、前回の最後で、同勧告にある次の記載を紹介しました。

 

「高校生活の3年間を一方の性に限ることは、人格形成からも、また男女共同参画社会づくりの視点からも問題である。」

 

今回の勧告、私は、その記載の多くの個所で疑問を持つのですが、先ずは、この文章。

看過できない「傲慢」で「意味不明」、「偏見」にとんだ文章であると考えます。

そして、この文章、今回問題となっている埼玉県立の高校だけでなく、広く私立、国立の別学校に対しても向けられた指摘であるはずです。

上記の文章、すごく大きな問題指摘を、「シラー」と、さりげなく書いていると言えましょう。

 

【疑問点】

① 問題であると指摘する「人格形成」とは何なのか? どのような人格が形成されることを問題視しているのか? 逆に、彼女(彼)らが理想とする人格とは何なのか? 我々別学卒業生のどのような人格形成を問題にしているのでしょうか?

② 次に、「高校生活の3年間を一方の性に限ること」と①の人格形成に因果関係があるというのなら、その証拠(エビデンス)として、どのようなもの(研究論文等)を挙げるのか。

③ そもそも「高校生活の3年間を一方の性に限る」とは何なのか? 一応は「別学高で授業を受けること」と理解するが、少なくとも私は、男子校である浦和高校で過ごした3年間を「一方の性に限られた3年間」とは全くもって考えてはいないし、多くの同級生、同窓生もそのようには考えていないと思う。我々の過ごした3年間を一方的に「一方の性に限られていた」と「空想している」だけで、現実を全く理解していないというか、理解しようとする謙虚さも見られない。

④ 浦和高校での生活の中でも他校(例えば浦和第一女子高等学校)との「交歓会」があったし、文化祭では多くの女子学生・生徒、保護者にも来場いただき、校庭では傾いた陽の中でフォークダンスに興じたこともあった。個人的にも異性との付き合いや相談にのったこともありました。

➄ 「男女共同参画社会づくりの視点」からも別学高の存在が問題と指摘していることについても、その意味するところが全く理解できません。ただ、この点については、この勧告文書の別の個所で、例えば浦和高校における「管理職」や「教職員」の数を挙げて、男性が多い、という指摘がされています。もし、そのことを問題視しているのであれば、「別学高」廃止議論とは別の視点からその是正が図られてもいいでしょう。ただ、そこにも注意するべきは、あくまでも人員の配置は「適材適所」で行われるべきであり、単なる男女の数合わせであってはならない、ということです。

 

さて、今回のブログ、「おかしな「勧告」について その2」として私の疑問点、意見を書かせていただきましたが、正直、まだ書ききれていません。

そこで、次回も「その3」として書かせてください。

 

今回もお付き合いいただき、ありがとうございました。

 

追伸:埼玉新聞(1月31日付け)によれば、去る1月30日に、埼玉県立浦和第一女子高校においても埼玉県教育局による意見聴取が行われたようです。そこでは、PTAがアンケート調査をした結果、9割が共学化反対で、また、「男女共同参画のために共学化が必要」との指摘に対して反対意見が多かったこと、さらには「安心して通わせることができた、居場所があった、救われた」といった声があったことが紹介されています。

おかしな「勧告」について(その2)” に対して3件のコメントがあります。

  1. 宮本 卓次 より:

    諏訪部さんのご指摘に賛同します。
    別学が差別であり、共学が理想と言わんばかりの指摘にはあきれるしかありません。
    問題があると言うならば、根拠(エビデンス)を明確にすべきです。
    想像するに、そう言う、具体的な証拠はないままに、時代の流れにのって、
    そう言ってみた、そう言わなければ、自分たちが責められるという、
    保身に寄り添った(?)勧告に見えてしまいます。
    そうでないならば、勧告の真意をもっと説明すべきだと思います。
    私見ではありますが、私は男子校での生活に大いに満足しています。
    女生徒がいれば、もう少しまっとうな格好で通学したとか、あわよくば、
    何か楽しいことがあったかもしれませんが、何も不満は残っていないです。
    全学年を通じたクラス別サッカー大会に、教員チームも参加され、その中で
    数学の教師が柔道着を着て参加された姿は、共学校では絶対に見られない
    状況と思っており、懐かしい限りです。

  2. 宮本 卓次 より:

    少しでも、問題解決に繋がればと思ってコメントしました。

  3. 小野伸一 より:

    勧告に大きな疑問を感じている一人です。男子校はもちろん、女子校にも大きな意義があると考えます。
    慶應義塾大学の中室牧子教授によれば、別学に意義があることを示す研究は多いそうです。オーストラリア国立大学のAllison Booth教授は、必修授業である「入門経済学」を受講する学生を「女性のみ」「男性のみ」「男女混合」という3つのクラスにランダムに割り当てた結果、「女性のみ」のグループが成績が上がることを示した有名な研究を発表しているそうです。別学では「女性はこうあるべきだ」という規範意識に囚われにくいためだと考えられているそうです。
    翻ってこの勧告には「調査及び議論を尽くした」と書かれているにも関わらず、全くエビデンスが記載されていません。どのような比較調査をしたのでしょうか。極めて客観性に欠ける、はじめから結論を決めてかかったような杜撰な勧告であると感じます。

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