「後見制度というもの その➄」
(この写真は、北海道能取湖のサンゴ草 です。)
たかしな司法書士事務所の司法書士 諏訪部秀明です。
前回は「任意後見制度」というものについて、
「皆さんの頭がしっかりしている間に、将来の頭の病気(例えば「認知症」)に備えて、あなたが信頼する人との間で、「財産管理」のことや「介護などの身上監護」に関する希望を伝え、文書化しておくこと」であり、具体的には、
- 文書化(=任意後見契約)は公証人による「公正証書」という形を取ること
- 任意後見契約の内容のうち基本的事項は「登記」されて公開されること
- ただ、任意後見契約の効力は、上記①②の時点では未だ発生せずに、将来、頭の病気が発生し、家庭裁判所がその事実を認定して、「任意後見監督人」を選任した時から生じること。
- そして、この任意後見監督人の監督下、あなたが信頼した人が「任意後見人」となって委任された事務を開始する。
といったものであると説明しました。
それでは、どのようなケースがあるでしょうか?
【ケース①】 親子の間で「任意後見契約」を締結する。
えっ! 親子の間で「契約」を締結するの? そんな仰々しいこと必要ないよ!!
しかも、任意後見契約って「公正証書化」する必要があるのでしょ。必要ない、ない!
と思われる方もいるでしょう。
でも、いざ、親が認知症になったときは親の財産管理などはどのようになるのでしょうか、想像してみてください。法定後見の申立てが必要になります。そして、家庭裁判所は成年後見人(認知の程度によっては保佐人、補助人)を選任し、それらの者が財産管理などを行うことになります。その方がいいという考え方もありますが、簡易な内容でもいいので親子間で任意後見契約を締結して、現金その他の財産の使い方(代理権の内容)を決めておくのが良いのではないでしょうか。私は、特に子供が複数いて、将来、その子供間で疑心暗鬼、争いが生じうるような場合は、「親子間での任意後見契約」をお勧めします。
【ケース②】 信頼できるご友人、又は法律専門家との間で「任意後見契約」を締結する。
「独身の方」、「配偶者が先にお亡くなりになって今はお一人という方」、「親族はいるが疎遠、あるいは頼りたくないという方」がご自身の将来に備えて、身近なご友人等と「任意後見契約を締結するというケースです。
ご自身のためにも、また周囲の方々(例えば身体的な衰えにより施設に入居した場合の当該施設関係者や行政関係者)のためにもご自身で頼れる人を確保しておくという発想を持っていただきたく思います。
最後に、上記【ケース②】に関連してですが、「見守り契約」というものに触れておきたいと思います。
先に記載した通り、「任意後見契約」は、将来、頭の病気が発生し、家庭裁判所がその事実を認定して、「任意後見監督人」を選任した時から効力を生じるというものでした。
そのため、将来の頭の病気に備えて「任意後見契約」は締結したが、(幸いにも?)「ピンピンコロリ」で亡くなったため、任意後見契約の効力は生じなかった・・・、とうこともあります。
それはそれでよいとしても、特に身体的な衰えを感じるようなケースでは、「見守り契約」というもの、すなわち、常日頃から連絡を取り合い、いざというときには、責任をもって対応してもらえる人を確保しておく、ということも考えたら良いのではないでしょうか?
私は、この「見守り契約」、例えば遠い故郷に、高齢になったご両親(または父母のいずれか一方)がおり、子供である自分はなかなか帰ることができない、といった場合はお勧めです。例えば、ご両親の近くに事務所を構える司法書士との間で「見守り契約」を締結して、日ごろから「見守り」を依頼し、また、ご両親にもその人を頼ってもらう・・といったことをなさったら如何でしょうか?
ホームドクターのような気軽な相談相手として、信頼できる方と常に繋がっている安心感を得ることができます。
親御さんに対する、「よいプレゼント」になるのではないでしょうか。
今回もお付き合いいただき、ありがとうございました。
追伸:「見守り契約」については、「任意後見契約」とともに、「公益社団法人 成年後見センター・リーガルサポート」のホームページが参考になりましょう。