「後見制度というもの その③」
たかしな司法書士事務所の司法書士 諏訪部秀明です。
前回は「成年後見制度」についてお話ししました。そこでは、
- 成年後見の開始は、家庭裁判所が「後見開始の審判」をし、その審判が確定するところから始まる。
- この審判は、「審判の申立て」→「家庭裁判所での審理」→「後見開始の審判」というプロセスがあるのですが、申立てには結構な分量の資料提出が必要となる。
- 家庭裁判所は、「後見開始の審判」にあたり、成年後見人を選任するし、場合によっては成年後見人を監督する「成年後見監督人」も選任する。
上記のことを踏まえて、裁判所のホームページから「成年後見制度について」を見ていただくのが良い、といったことを書きました。
(「裁判所」→「裁判手続案内」→「後見ポータルサイト」→「成年後見制度について」)
また、私ども司法書士が、成年後見に関してお手伝いできる場面としては、
- 後見制度全般についてのご相談に応じ、アドバイスをする。
- 家庭裁判所に対する「申立て手続き」のお手伝いをする。
- 「成年後見人」に就任して、ご本人の財産管理、身上監護といったお手伝いをする。
- 「成年後見監督人」に就任して、例えば、ご家族が「成年後見人」に就任されたのちのお手伝いをする。
があるとしました。
今回は、上記のうち①の「アドバイス」について書きます。
成年後見制度は認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断する能力が不十分な人の身上監護、財産管理のためのものですが、「申立て」はご家族や親族の方によるケースが多いです。
そこで、ご相談に来られるご家族などには、制度そのものを十分に理解していただく必要があり、そのためには上記の裁判所のホームページや、私ども司法書士が関係する「公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート」のホームページを参照いただいています。
成年後見は、申立てから後見の終了まで、比較的長期間続くものですから、その間に様々なことが生じることが予想されます。そのようなことを、口頭で簡単にご説明することは困難ですし、ご理解いただくのも難しいです。そのため、時間がかかっても、上記のホームページをご覧いただくようにお願いしています。
その上で面談を実施し、資料をご提示しながら特に次の点を説明します。それは、
- 成年後見人の仕事は、原則、ご本人が亡くなるまで続くものであること。(当然、成年後見人に対して支払う報酬はその間、続くことになる。)
- 成年後見人はあくまで「ご本人のため(ご本人の利益のため)」を第一に考え、行動するのであり、時には申立人やご家族の意向と反することがあること。
- 毎年、家庭裁判所に状況を報告して、その助言、指導等を受ける仕組みになっていること。
です。
これらの点は、「成年後見の使い勝手の悪さ」として、後々、ご家族等が不満を持つことがあるからです。(産経新聞 令和4年9月25日埼玉版)
例えば、父親が亡くなり、相続人が母親と子供2人であるが、母が認知症のため、遺産分割協議のために「成年後見人」の選任を申し立てた。分割協議は無事終了したが、成年後見人の仕事はその後も続き、母親の財産の使い道について、何かと口出しされるところとなった・・・・とか。
正直申し上げて、ある方が認知症になってしまった後ではその方の財産管理等の手段はかなり限られてきます。そのため、超高齢化社会となった現代では、認知症になる前からの準備が必要となってきていますし、そのための制度(任意後見制度など)があります。
次回は、「判断能力が不十分になる前に・・」取りうる手段としての「任意後見制度」についてお話ししたいと思います。
今回もお付き合いいただき、ありがとうございました。