「後見制度というもの その④」

たかしな司法書士事務所の司法書士 諏訪部秀明です。

 

前回は「任意後見制度」という言葉(ワード)を紹介して終わりました。今回はこの「任後見制度」なるものについてお話ししたいと思いますが、その前に・・・。

 

我々司法書士が、その職務を行うにあたり依って立つ規範として、「司法書士法」(及びその関連規則など)と「司法書士倫理」というものがあります。司法書士法も昨今、改正が多いのですが、この度、令和5年4月1日から新しい司法書士倫理というもの(名称も「司法書士行為規範」と改められた。)が施行されました。

 

そして、この「司法書士行為規範」では、新たに①任意後見契約 ②財産管理業務 ③民事信託支援業務 という三つの業務に関する行為規範が定められました。

 

前置きが長くなりましたが、要するに司法書士の業務として、昨今、これら三つの業務が注目を浴び、実際それらへのニーズが増加しているということです。私も各種研修会への参加や、書籍の購入などにより現在、勉強中です。

そういったことで、未だ実務上の経験が不足している中で今回お話しするのですが、まずは「任意後見契約(制度)」について・・・。

 

教科書的に「任意後見制度とは」を説明すると長くなり、難しくなるのですが、私は、次のように、説明しています。

 

「皆さんの頭がしっかりしている間に、将来の頭の病気(よりはっきり言えば「認知症」)に備えて、あなたが信頼する人との間で、「財産管理」のことや「介護などの身上監護」に関する希望を伝え、文書化しておくこと」

 

そして、制度的な特徴として、

  • 文書化(=任意後見契約)は公証人による「公正証書」という形を取ること
  • 任意後見契約の内容のうち基本的事項は「登記」されて公開されること
  • ただ、任意後見契約の効力は、上記①②の時点では未だ発生せずに、将来、頭の病気が発生し、家庭裁判所がその事実を認定して、「任意後見監督人」を選任した時から生じること。
  • そして、この任意後見監督人の監督下、あなたが信頼した人が「任意後見人」となって委任された事務を開始する。

 

ところで、この「任意後見制度」というもの、実は「任意後見契約に関する法律」が平成11年に成立したことにさかのぼります。20年以上前にできた制度が超高齢化社会の到来の中、今、注目されているのです。

 

これまでのブログでの話(「後見制度というもの その①②」)で、成年後見制度には「法定」後見制度と「任意」後見制度の二つのものがあり、「法定」後見制度は「判断能力」が低下したのちに、その低下の程度に応じて家庭裁判所が成年後見人等を選任し、その権限も法律で定められている、ということでした。

 

このような法定後見制度と任意後見制度との違いから、立法者は当初、自由度が高い任意後見制度の方が普及するのではないかと考えていたようです。

 

しかし、現実には、法定後見制度の方が多く利用(?)されています。

ただ、私は、その原因は

  • 任意後見制度というものの周知の程度が低いこと
  • 現在、「判断能力」を有する者が将来の「判断能力の低下」という事態を想定しにくい(あるいは、「想定したくない」という心理がある)こと

にあるのではないかと考えています。

 

次回は、この続きと、任意後見制度に関連して「見守り契約」というものの話などさせていただく予定です。

 

今回もお付き合いいただき、ありがとうございました。

 

 

追伸:今回お話した「任意後見制度」については、裁判所や法務省のホームページの他に、「日本公証人連合会」のホームページが参考になりましょう。

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