石鹸一個の思い出

秋の北海道・駒ヶ岳です。

たかしな司法書士事務所の司法書士 諏訪部秀明です。

 

先日、私の大学時代の恩師が亡くなりました。政治思想史の小川晃一北海道大学名誉教授です。卒業後数年間は年賀状のやり取りなどしていましたが、ここしばらくは音信不通の状態でした。

私は、小川先生のゼミで、ある国政選挙後のアンケート調査のお手伝いをしたことがあります。今から45年前の冬の北海道、除雪された雪で道幅が狭くなった道路を歩いて回りました。

調査対象者の方のお宅を訪問するのですが、あらかじめハガキで調査協力のお願いをしていたとはいえ、「厄介な訪問者」であったことは事実でしょう。調査協力のお礼の品は、「固形石鹼1個」です。

何軒かのお宅での調査を終え、陽が傾いたころ、あるお宅を訪問しましたが、そのお宅では調査対象としてお願いしていた男性は現れず、代わりに奥様が対応してくださいました。

ただ、私は、明らかに居留守をつかわれているとの思いから、少しぶっきらぼうに「ご主人は何のお仕事をされているのでしょうか?」といった趣旨の質問を二、三度してしまったところ、奥様は、小さな声で「いま、仕事はしていません、失業しています」とのお答えでした。

そのお答えに動揺した私は、その後のことは覚えていません。ただはっきりしていることは、お礼の品である「石鹸一個」をお渡しすることを忘れて、その場を逃げるように去ったことです。

 

それ以来、私は、今でも風呂場では固形石鹸を使っています。毎日、45年前の、その日のことを思い出しています。

 

今回もお付き合いいただき、ありがとうございました。

 

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